貸借対照表上の有形固定資産の部分には、建物、建物付属設備、構築物、機械装置、車両運搬具、工具器具備品、リース資産、土地といった項目が並んでいます。これらのうち土地以外は、毎期減価償却をした分だけ簿価を減らしていきます。
事業計画期間中に有形固定資産の調達を予定していなければ、数字は減少するだけですが、投資によって設備を調達する予定であれば、いずれかの項目の金額が増加します。
上記の変動は、各個別の固定資産ごとに減価償却のルールによって変化しますので、理想は各個別資産ごとに計算すればよいのでしょうが、減価償却の計算ソフトを利用しないとかなり面倒です。固定資産台帳にある資産を全部excelに転記することになりますが、それだけでやる気がなくなってしまいそうです。資産の数が増えれば増えるほどその手間は膨らみます。
そこで、私が採用している方法は、科目ごとの合計で計算してしまうやり方です。手間は格段に少なくなります。かといって精度が落ちるかというと、さほど落ちません。その昔、税理士さんの使う減価償却の計算ソフトと比較してみたところ、5%以内の差に収まったことから、科目ごとの合計で計算するやりかたを続けています。
ただし、通常のルールの減価償却額以上に減価償却費を計上できる制度が昨今多いですから、この制度を利用している場合は注意が必要です。特別償却といって、通常の償却費よりも多い金額をその年度に減価償却してもよいですよ、という制度なので、翌期以降は同じ償却額・償却率になりません。ですので、社長や経理担当にヒアリングするか、償却資産申告書を確認して特別償却の有無を確認しましょう。
さて、減価償却の計数計画の立て方ですが、基本となる考え方は投資計画で示した内容と同じです。ですが、科目ごとに計算するやり方の場合は、耐用年数や償却率の平均値を探すのではなく、固定資産台帳から基準年度の簿価と基準年度の減価償却額を調べて、おおざっぱな償却率を求めましょう。
例えば、「機械装置」の基準年度の期首簿価が2000万円、基準年度の減価償却額が500万円であれば、償却率は 500万円÷2000万円=0.25となります。期末簿価は1500万円となりますね。計画初年度の減価償却額は、「機械装置」の期首簿価1500万円×0.25で計算して、375万円の減価償却費となります。
さて、このやり方ですと一点だけ問題があります。固定資産台帳をみても、固定資産の減価償却費を原価に計上したのか販売管理費に計上したのかわからない場合があります。丁寧な税理士さんの場合は、固定資産台帳に記載される資産名の最後に(製)であったり(販)であったりと、製造原価なのか販売管理費なのかをわかるように記載してくれています。経験上、そうでない場合が多いです(笑)。
この場合、製造原価に計上する減価償却費の額と、販売管理費に計上する減価償却費の額は、基準年度の割合で計上するしかありません。
具体的には、例えば、基準年度に計上されている、製造原価に計上する減価償却費の額が1000万円、販売管理費に計上する減価償却費の額が200万円だとすると、減価償却費(製造原価):減価償却費(販売管理費)=5:1になるわけです。
上記のように、科目ごとに計算を行って、計画1年目に計上する減価償却費の総額が、900万円と計算されたとすると、計画1年目の製造原価には750万円(900万円×5/6)、販売管理費には150万円(900万円×1/6)を計上することになります。
毎期の減価償却費がわかれば、おのずと各科目ごとの期末簿価もわかりますので、これを有形固定資産の各数値を計算していきます。
もっと詳しく、事業計画書(財務諸表)の作り方を知りたい方は
⇒こちら
事業計画書(財務諸表)作成の実務(受注方法・報酬・同業差別化ポイントなど)を知りたい方は
⇒こちら(メルマガで配信しています)