会社を経営していると、様々な場面で事業計画書の作成を求められます。お金を金融機関から借りるとき、「事業計画を作成してください」と言われていませんか? もう記憶にないかもしれませんが、創業時、創業間もないころ、はじめて金融機関からお金を借りようとしたときにも、支店の担当者から「事業計画書を作成してください」と言われたはずです。他には、補助金の申し込みや行政の制度・認定などを受けるときにも、申請資料として事業計画書が求められる場合があります。場合によっては、金融機関だけでなく、それ以外からのお金を調達したり、資金の援助を受けるためだったりと、支援の是非を判断するための材料として事業計画書を求められたりもします。
今あげた例は、基本的に「お金」に関わるものばかりで、お金を外部から借りるためのツールが事業計画書なのかというと、そうではありません。経営者が今年、今後、会社をどうしていきたいか? その答えを見える化するためのツールでもあります。経営者は常々、会社をどうようと考えてはいるのでしょうが、それは自分の頭の中だけにあればよいものではありません。あなたと一緒に働く従業員達にも明示してあげることが必要です。会社がどういう方向に進んでいきたいのか、自分たちは何を求められていて、何をすればよいのか? それによって、自分たちはどう成長していけるのか? こういう疑問を解消してこそ、「この会社で働こう」と思ってくれるのです。
コンサルタントが報酬をいただいて事業計画策定を支援する場合には、主には上記であげた、①お金の調達ツールとして、②経営の行動計画として、の2つを目的とする場合が多いでしょうか。特に私のような事業再生コンサルタントの場合は、①をきっかけとした支援依頼の割合が高いです。
無借金経営、お金の調達の必要性は全くない、資金繰りも全然問題ない、という会社は、そもそも数が少なく、そちらかといえば、経営コンサルタントの支援が必要な会社というのは、何かしらお金の問題を抱えている会社が少なくありません。借入金の返済負担が大きく返済条件を見直し(いわゆる「リスケ」)たい。設備投資をしたいが手元に資金がない。新たに事業を始めたいが一時的な資金が必要。こういった場合、大抵はすでに付き合いのある金融機関に融資の相談をしに行くことになるのですが、金融機関もお金を貸した後、会社を放置しているわけではありません。状況がよくなければ、「はい、はい、いいですよ。いくら必要でしょう?」とはなかなかなりません。
会社の微妙な状況というのは、決算書や試算表を見て、もしくは何気ない経営者からの会話から把握していて、会社の状態に見合った貸し出しかしてくれないのが金融機関です。それでも、金融機関の担当者として情報が少なく、判断に迷うときには、「では事業計画を作ってみてくれませんか?」となるわけです。リスケの場合も一緒です。外部環境の変化など、一時的に返済が苦しくなったとして、元本返済を一時的に停止するなどの返済条件を変えてほしいとき、「わかりました。では3か月以内に事業計画を作成いただいて、それで返済条件を考えましょう」となったりします。