暦的にはもう秋ですが、暑さ的にはまだ夏ですね。
我が家でもイベントをひとつずつこなして、この夏の最後の思い出作りに花火をやることにしました。クライアント先企業に向かう途中、いつも気になる店頭の垂れ幕がありまして、休日にそのお店に行ってみることにしました。垂れ幕には「花火コーディネーターのいるお店」と書かれていて、中に入ると、いろいろな種類の花火が棚一面に並べられていました。
見て楽しいのはいいけど、どれを買ったらいいかを迷うほどの品揃え。小売店では決して見られないレベル。コーディネーターなる店員の方に話を聞いてみることに。「うちは小さな小さな男の子がいて、びっくりすると泣き止まなくなるので、音があまり大きくないもので」と話してみたところ、「ああ、なるほどですね」とうなずかれると、ささっとおすすめ商品をいくつか選んでくれました。
その手際の良さに感心しました。当然といえば当然でしょうが、おそらくホームセンターとかスーパーなどの小売店の店員ではこうはいかないだろうなと。
1960年くらいでしょうか、「問屋無用論」が提起されて既に半世紀が過ぎていますが、いまだ日本には卸売業は多く存在しています。ですが、その数が年々減少していることも事実であり、厳しい経営の舵取りが常に求められている業種です。
一般的には、
①消費者ニーズの分析によるマーチャンダイジング活動のレベルアップ
②取り扱い商品の専門性や多様性
③リテールサポート型販売活動の強化
④サプライチェーンの効率化
⑤川下(小売)へ展開 等
が、その経営課題とされています。ですが、言うは易し、行うは難しです。
どれもこれも対応できる中小企業はそう多くはないでしょうから、自社のおかれた環境や強み・弱みを意識して、どの軸を中心に経営革新を図るべきかを考える必要があります。
さて、この「花火コーディネーターのいるお店」、業種でいえば「卸売業」です。業績や経営状況を調べてみると、この数年、毎期黒字を維持されているようです。私が支援させていただく卸売りのクライアントにこんな企業はありません。(だからコンサルティングの依頼がくるのでしょうが)素晴らしいの一言です。
客目線で考えれば、従業員の商品知識による顧客関係性の強化やがこの会社の強みのひとつなのではないでしょうか。また、お伺いしたところ、季節によって陳列する商品をガラッと入れ替えるそうです。クリスマス、ひな人形・・・、なるほど、そうすれば年間を通じて、穴をあけることなく売上を維持できるということでしょう。ちなみに節句人形アドバイザーという方もいらっしゃるようです。なるほど、②を強化した会社なのだと想像できます。
私は、ただ花火を買いたかったのではなく、子供との思い出づくりの材料を買いに行ったのだと思います。そこに「安さ」を求めてはおらず、「価値」を購入しました。いいものが欲しい。面白いものが欲しい。ストーリーのあるものが欲しい。納得して買いたい。そんなニーズを持った人たちは相当数存在します。そういう方々の欲求を満たすために、このお店の強みがうまく刺さるのだと思います。
しかも、消費者との接点つまり⑤の実行は「顧客の声」を直接収集することができます。その声を生かしてまた②を強化できる。そんなプラスのスパイラルも生まれてそうです。実際このお店は、自社オリジナルの花火も製造されているようでした。
黒字に必ず理由有り。この会社にそれを見た気がします。