ラーメン屋の価値はラーメンだけじゃない

その昔、金融機関から、中華料理屋(ラーメン店)の建て直しの依頼がありました。
多店舗展開(3号店、4号店)のための融資をしたものの、4号店のほうがなかなか売上げが上がらずに、回収の目処がたたないとのこと。

飲食はあまり得意ではないのですが、家の近所だったこともあり、引き受けることに。
自分にとっては難しいかなと(必死で準備して)思って望んだ案件だったのですが・・・

結果から言うと、なんともあっというまに売上げが伸びてしまいました。

その訳とは・・・??





4号店の店長は外国の方。日本での生活は10年を越えており、オーナーの経営する別の店で働いていたとのこと。ただし雇われ従業員で、店長経験はなかったよう。4号店の運営の際には、オーナーいわく、自分や別の店長からみっちり教育を受けたようで、万全の体制で臨んだのことでした。

私も、まずは客としてその料理を味わってみようと、夜に友人と尋ねて何皿かいただきました。

うん、おいしいじゃん!


ところが、お客様はまばらで1時間もすると長居をしているのは私たちだけ。日が悪かったのかなぁー、と思っていると、夜は毎日そんな様子とのこと。別の日にランチに寄ってみると、サラリーマン方々がいっぱいにはいっていて結構な回転率。んー繁盛してるじゃん。味は悪くない。というより美味しい。
その後、ぐるなびを見てみると、点数は3.5点。まあ悪いほうじゃない。何が悪いのか? 販促が足りないのかな?  いろいろ考えて、詳細の調査に望もうと準備を進めておりました。

数日後、別件で朝早く出張があり、そのお店の前を通ることに。そこで見たのは…。

なんと、きったない油ゴミが散乱しておりました・・・

「なんじゃこれ!!!!」

昔飲食店でバイトをしていたことがありました。その頃を思い出してみると、飲食店は、排水中の油分やゴミを分離、除去し油が下水道へ流れ出るのを防ぐためのグリーストラップ※を設置しなければならないのです。それで月に1回くらい、グリーストラップの底に溜まった汚泥物を取り除く仕事が嫌で嫌で・・・

※グリーストラップ・・・油水分離阻集器のことで、油脂を含む汚水が排水管設備を妨げないよう設置を義務づけられた装置です。

とまあ、そんな話は置いておいて、この汚泥物、もちろん家庭ごみとして捨ててよいかというと、そんなわけがありません。産業廃棄物として処理しなければなりません。ところが、この4号店の新店長・・・

店の前のゴミ置き場に、しれっと出しちゃってたんです。それを早朝にカラスや猫がつついて、ビニールが破れて、汚泥が散乱してました。もう、きったないの一言ですよ。


そこで、私は仮説を立てました。


「御近所さん、この汚いの見てるよね・・・、このきたないの見たら、誰だってそんな店いきたくないよね」


遠方から来る方やランチしか利用しないサラリーマンのお客様は、おそらく御近所さんではないのでしょう。だから、昼はそこそこ人が入るし、ぐるなびの点数も低くない。本当は、夜にもっと利用してもらいたいのですが、場所がらターゲットにすべきは近隣住民は、朝のきたないゴミ出しの事情を知ってしまっている。んでもって、「あんな汚いゴミ出しをする店になんかいかない」となるのでは??

まあ、誰もがそう考えると思うのです。






そんなことをオーナーに伝えて、状況を改善してもらいました。さらに店の前の掃除を徹底して行ってもうらうようにしました。(ちょっとご近所さんへのアピールの意味でも)

そしたら、徐々に客足が増えてきたじゃないですか!!!!!


この話、店長の人柄と言ってしまえばそれまでなのですが、少し視点を変えてみてみましょう。すなわち、ラーメンが美味しいだけでは、売上を上げ続けることはできないのです。ラーメン屋の価値を「ラーメン」だけで考えている人は、決してこの視点に気づけません。

ラーメン価値.jpg

このように、店に来る前、店に入る、注文する、食べる、会計する、退店する、その後という、一連の流れがすべて、お客様にとっては、あなたのお店が提供する一連の価値なのです。

ですから、この価値のどこかで、価値を感じないところがあれば、それは満足度があがり、不満足度が上がっていく要因になってしまいます。それはリピートが減り、客足が遠のき、売上減少になります。

自社の提供する商品、サービスの一連の価値の流れを意識することが、業績回復のポイントです。このとき、提供する側の目線ではなく、あくまでお客様としての目線でチェックしてみることが重要ですよ。

あなたの会社の”価値の流れ”正しくつながっていますか? 今一度見直して見られてはいかがでしょう?