これ、赤字から抜け出せない企業ではよくある話です。
ワンマンカリスマ経営者であった前社長が体調をくずされ、その後思うように体が動かずに、急遽息子が社長となってしまったのが、3年前。慶○大学卒業の息子は自頭のその3年の間、経営を一生懸命に勉強していたそうで現場や営業や経理のことは、一通りわかっていると言う。
息子が社長に就任して1年目は何も問題がなさそうに会社は動いていたようですが、2年目から対前年度で見ると業績が悪くなっている月が増えてきて、3年目には大きく赤字に転落してしまいました。前社長が病床からアドバイスをするも、息子にはアドバイスをどういかしたらいいかもわからず右往左往。
そんな会社に再生支援に入った私。
前社長は70歳を過ぎ、再生を息子に託すつもりでいるようで、現状分析のためのヒアリングや工場案内はすべて息子に任せるという説明がありました。その期待の息子さん。もともと会社を継ぐつもりなどなく、しばらくは経理と品質管理を担当していたようです。にもかかわらず、
「現場の人間は自分の担当のことしかわかっていない。全体を把握しているのは前社長と自分だけ」
自信ありげにそう言うのです。さすが○王大学卒。3年の机上の勉強で現場までも知り尽くしてしまったのでしょうか? さらには、
「会社を立て直すには、ラインバランスを最適化して生産効率を上げればいいんです。営業が既存顧客との関係を深めてもっと仕事を取ってくればいいんです。外注先に一声かけて値下げに協力させればいいんです」
自信ありげにまた言うのです。
(なんじゃそりゃ、教科書丸暗記よりもひどいな…、この人現場のことわかっていないな)
そう思った私は、ちょっと意地悪してみたくなって、
「具体的にはどうするのか、教えてください」
と社長に問うと、
「それを前社長に相談してじっくり考えます」
思わず、「おいおいっ!」そう突っ込みたくなりました。
社長を説得して、「従業員からも是非話が聞きたい」と申し出ました。多少ふてくされたようではあったけど、そんなことなど気にしてられません。さて、その従業員からのヒアリングでは、長机のお誕生日席には、息子がどっしりと構え、「さあ、お前たち語ってみろ」と威圧する。私が名指しで意見を求めてみても、ぽつりぽつりと何か奥歯につまったような物言いをする。あまり建設的な意見が出ずにその場は時間切れとなり、息子は「ほら、あいつらは何もわかってないんですよ」と決めつけていた。
「う~ん・・・」
今度は、息子のいない席でもう一度ミーティングの場を設定してもらうと、案の定、従業員たちの口は一気に開いた。出るわ出るわ、息子の文句。「社長は何もわかっていない!」「一般論が多すぎ」
批判はほどほどにさせ、ミーティングの主旨をしっかり説明すると、従業員たちは真面目な顔で私の話を聞いてくれました。業務フローを整理し、その上に各担当が考える問題点を書き出してもらい、どうすれば解決できそうか、アイデアを紙に書いてもらうと、その紙はあっという間にホワイトボードを埋め尽くしたのです。
その時点で、社長である息子をミーティングの場に呼ぶと唖然としてました。それもそのはず、何もわかっていないと思っていた現場の人間たちが業務上の問題点を明らかにし、さらにはその改善策まで考えてしまうのだから。
おそらく社長と何時間話し込んでも、具体的な現場改善の答えが出ることはなかったと思います。やっぱり現場はしっかりと自分たちのことをわかっていました。ちょっと考え方や発想のヒントを与えれば、しっかりと問題点を理解し、それをどうですればいいのかを考えられるのです。
頼りないとはいえ社長が「お前はわかっていない」と言い切ったら、口を閉ざしてしまうのがサラリーマンです。この3年間はそういう状態だったと言います。
息子が社長に就任した早い段階で、従業員としっかりとコミュニケーションを取って、変なプライドを捨てて頼り、そして一緒に考えていたら、もっとはやくに業績悪化を止められたかもしれません。
業績を回復させるには、社長だけが頑張ってもダメ! 従業員の協力無しでは絶対に会社は良くなりません。そのためには、従業員を巻きこみ、彼らの知恵をしっかりと活用するべきです。彼らはしっかり自分たちのことをわかっています。(そうでない場合もありますけどね…)
その後、従業員がまとめた改善案を、社長がみんなからヒアリングしたり帳票を分析しながら数値に落とし込み、改善計画書としてまとめると、従業員もその社長のスキルにビックリ。前社長にはなかった、計画の見える化で、従業員も少し現社長を見直したみたいでした。
社長と従業員が、お互いで良いところを見つけ、そして協力する。これが赤字から抜け出すために必要なことです。
↓ポチんと押してください
中小企業診断士 ブログランキングへ
↓こちらももひとつポチんと!
にほんブログ村
↓そーっと押してみる
